November 29, 2005

モスタルにブルース・リーで、やっぱり正解だった!



せっかく完成したブルース・リーの銅像(11月27日の日記参照:モスタルに完成したブルース・リー像が意味するもの)なのに、その一部がもう壊されてしまいました。除幕式の翌日の朝には、片方のヌンチャク棒と鎖がなくなっていたそうです。

それはとても残念なことでしたが、このニュースを配信した時事通信社の伝え方のほうにも疑問を感じざるを得ません。まず、記事の題名が「ブルース・リーの銅像破壊=除幕式直後―ボスニア」です。その記事は下のリンクで読めます。
Livedoor ニュース (追記:左はリンク切れです。)
Yahoo! ニュース (追記:左はリンク切れです。)

「ボスニア・ヘルツェゴビナ南部のモスタルに建てられたカンフー映画の英雄ブルース・リーの銅像が除幕式からわずか数時間後に破壊された。」という部分が引っかかります。

新聞記事を最後まで読めばわかりますが、実際に損壊が発見されたのは除幕式の次の日の早朝なんですよ。「除幕式直後」「除幕式からわずか数時間後」というのは、考えようによっては間違いではないかもしれないけれど、誇張されていると感じました。

AFP通信による英語の原文はここで読めます。
Vandals hit Bruce Lee statue in Bosnia (追記:左はリンク切れです)

時事通信社は、原文の "hours after" をそのまま「数時間後」と直訳したようなのです。しかし、例えば3時間後でも13時間後でも英語では "hours after" になるわけで、日本語の題名の「直後」や記事内の「わずか数時間後」という響きからすると、とても一夜明けた後の話には聞こえません。見出しだけ読んだ人が誤解すると思います。これを翻訳した人は、言葉使いやニュアンスを全然気にしていないのかな??という感じがしました。(女性週刊誌やスポーツ新聞じゃないんだから・・・。)

一方、Asahi.com (朝日新聞)では、「除幕式から1日もたたないうちに壊されているのが見つかった。」「わずか十数時間後に」となっており、こちらのほうが適切な表現だと思いました。

Asahi.com の記事はここ。
ブルース・リー像のヌンチャクなくなる ボスニア (追記:左はリンク切れです。)

日本語と英語間の正確な翻訳というのは難しいとは思いますが、ニュースを読むときは鵜呑みにするのではなくて、自分の頭で考えて真意をとらえないと・・・危ない危ない。また、自分自身が文章を書くときも、知らず知らずのうちに不正確な表現をしていることがたくさんあると思うので、気をつけねば・・・。

そのほかに私が感じたことは以下の通りです。

土台が低すぎた??

公共の場所に設置される銅像の場合、耐久性が重要です。人が不意にぶつかったりボールが飛んできても壊れないように。ボスニアの像は、ヌンチャクや鎖など壊れやすい部分があるので、これ以上同じ被害が起きないようにするためには(フーリガンが夜中によく来る公園だそうですし)、土台を高くして人の手に簡単に触れられないようにするしかないんじゃないかな・・・。土台をあえて低くしたのは、実物大のブルース・リーの体のサイズを間近で味わうためだったかもしれません。手を伸ばせばすぐヌンチャクに触れられるような距離です。

土台の低さがわかる写真
Bruce Lee symbol of unity in Bosnia
民族対立続くボスニアの町で、ブリース・リーの彫像完成 (追記:左はリンク切れです。)
Bruce Lee remembered in Hong Kong, Bosnia(簡単に手が届いてます。)

香港の方が土台が高い
香港にもブルース・リーの銅像=生誕65年を記念 (追記:左はリンク切れです。)

公園の宿直管理人はなぜ止めなかったのか?!

"I heard a loud bang but I was alone and I couldn't stop them. Police should have been more agile. They know that hooligans visit this park regularly." と宿直管理人は言っていますが、本当に止めようとしたようには思えないんですが。フーリガンが暴れているのを通報したのではなく、朝になって銅像が壊れているので警察に通報した、ということのようですし。いつもの不良どもがまた来た、ぐらいにしか思わなかったのでは?なんだか、お花見に来た人たちが酔っ払ってどんちゃんさわぎをするうちにハメをはずして物を壊すのに似ている気がします。酔って暴れている時点で警察に通報して欲しかった・・・。

やっぱりブルース・リーの銅像で正解だった!!

これがもしもブルース・リーではなく、すこしでもカトリック寄り、またはムスリム寄りの人物の銅像だった場合、たとえ酔っ払いのフーリガンに壊されたとしても、民族間のけんかに発展していたかもしれません。いくら宗教に関係ないと説明したところで、それを信じることができない人々がいてもしかたがありません。その点、今回はブルース・リーなので、これをクロアチア人またはムスリムのせいにするひとはまだいません。市民の怒りはもっぱらフーリガンに向けられています。雨だった土曜日の除幕式に参加したのは300人程度でしたが、モスタルはヘルツェゴビナの主要都市なので、通勤・通学に来る人々がたくさんいます。私の友人もそうで、月曜日に銅像を見るのを楽しみにしていたのに、まだ見もしないうちに壊されたことを知り、憤慨していました。

現在捜査中だそうですが、早く解決するといいですね。

写真で見る!今日のブルース・リー像につづく

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