March 30, 2006

ネレトバ川の汚染事件 (2)



ヘルツェゴビナの水源であるネレトバ川に水力発電所の冷却油が流れ込んだ問題( --> 3月4日の日記「ネレトバ川の汚染事件(1)」)で、ヘルツェゴビナ安全消防局の局長が首都サラエボの新聞に3月22日に語ったところによれば、事態は収拾したそうです。これで、また水道水が使えるようになりました。ただ、これまでの各機関の発表には話の食い違いが多々あったため、いまいち信用できないというか・・・。

事件発覚後、すぐに近くのダムをせき止めたりして、水の浄化作業が進められ、3月10日までには終了したそうです。

その後の新聞記事をざっと要約すると以下の通りです。(記事はそれぞれBljesak.infoから。クロアチア語)

3月17日の新聞記事
  • Electroprivreda (ボスニア・ヘルツェゴビナの電力会社) が水や魚を調べたところ、発がん性物質PCB*1(ポリ塩化ビフェニル)を含む油の含有度は標準値よりも少し高い程度(許容範囲以内)で、50ppm以下なので発がんの危険性はないと繰り返す。

3月18日の新聞記事
  • ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦の衛生局が、発がん性物質を含む油の含有度が許容値の2.5倍から4.5倍を示していると発表。(つまり汚染水である。)

3月20日の新聞記事
  • もっと詳しいことが分かるまではネレトバ川で釣りはしたくないという、漁師たちの話

3月22日の新聞記事
  • ヘルツェゴビナ安全消防局の局長が首都サラエボの新聞に語ったところによれば、事態は収拾したということ。水は使っても飲んでもいいし、水力発電所も正常に稼動している。魚を獲ってもいいし食べてもいい。しかし、検査の一部はスロヴェニアの研究所に依頼しており、検査結果はまだ出ていない。

さて、ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦の衛生局と電力会社の意見がかなり食い違っているのですが、一体どちらを信頼すればいいのでしょうね?

さらに、不可解なのは、ヘルツェゴビナ衛生局(ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦の衛生局とは別の組織)の発表では、事件直後の2月28日から3月13日までの間の水質検査で、許容範囲以上の油の含有は全く認められなかったということです。それぞれの組織が、自分たちの方法で検査をしているため、違う検査結果が出ているのだと思います。また、水の浄化作業が終了する前に、クロアチアの研究所も検査をしており、その結果では、事件後のネレトバ川の水から、発がん性物質を含む油が高濃度で検出されたということです。これも、ヘルツェゴビナ衛生局の意見と食い違っていますね。

Electroprivredaやヘルツェゴビナ衛生局の発表を信じるとすれば、ネレトバ川は汚染されていなかった(PCBの含有量が許容範囲以内なので)ということになります。また、ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦の衛生局を信じると、ネレトバ川は汚染されていたけれど、浄化作業が済んだので多分もう大丈夫(検査の一部はまだ結果が出ていませんが)、となります。

ボスニア・ヘルツェゴビナの人たちが、「政府は信用できない。」と言うのをよく聞きますが、なるほど、こういうことなんだ・・・と思いました(-_-;) ボスニア・ヘルツェゴビナに住む友人に、ヘルツェゴビナ安全消防局とヘルツェゴビナ衛生局とボスニア・ヘルツェゴビナ連邦衛生局のどれを信じるかと聞いてみたら、「どちらも信じない。」と言っていました。ましてや私営に近い電力会社の言い分はさらに信憑性が薄いと。水はミネラル・ウォーターを買って飲んでいるそうです。( --> ネレトバ川の汚染事件(3)へ続く)

*1:参考:PCB(ポリ塩化ビフェニル)について -ウィキペディアより-

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