April 25, 2006

クロアチア語の挨拶



クロアチア語の「こんにちは」の挨拶で、カジュアルなものには

Zdravo ズドラーヴォ(元の意味は「健康」)

Bog ボーグ(元の意味は「神と共に」)

Bok ボーク(Bog の発音を言いやすくしたもの)

Ćao チャオ(イタリア語の Ciaoから)

Bokić ボキッチ(Bokを、おちゃめな感じで言うとこうなる。俗語。)

などいろいろありますね。それぞれどう違うのか、復習もかねてクロアチア人の友人たちに聞いてみました。

クロアチアの首都ザグレブ周辺でよく使われる Bog は、Zbogom("[Go] with God"「神と共に」の意味で、別れの挨拶として使われる)の真ん中を取ったものですが、ボスニア・ヘルツェゴビナに住むクロアチア人の多くはむしろ Zdravo のほうを好むようです。神の名を軽々しく口にしたくない場合や、ボスニア・ヘルツェゴビナのように複数の民族が住む場所では、「健康」という意味合いを持つ Zdravo のほうが挨拶としては無難なのだそうです。

しかし、クロアチア国内では、この Zdravo という言葉が好まれない場合があります。クロアチアが独立する前のユーゴスラビア社会主義連邦共和国では、宗教色の濃いものが公の場ではあまり好まれない傾向にあったため、気軽な挨拶には Zdravo のほうがよく使われていました。それで、現在クロアチアで Zdravo と言うとなんだか社会主義者のように聞こえるとか、(クロアチア人側からみたら社会主義寄りの)セルビアっぽい響きがあるという理由で、Zdravo という言葉を敬遠する人々がいるのです。

では、キリスト教信者でない日本人がクロアチアに行って、Zbogom や Bog (「神と共に」)などと言ったら変に聞こえるでしょうか、と聞いてみました。すると、クロアチア国内ではもう挨拶の言葉として定着しているので、日本人でも Zbogom や Bog を使って差し支えない、という答えが返ってきました。クロアチア国内では、誰でも Zbogom や Bog を使えると考えてよさそうです。

一方、ボスニア・ヘルツェゴビナのクロアチア人は、話し相手がクロアチア人だとわかっている場合には Zbogom や Bog を使うこともあるけれど、相手がセルビア人やムスリム(ボシュニャク)、または相手の宗教がわからない場合は Zdravo を使うそうです。セルビア語にも Zbogomという言い方はありますが、セルビア人はカトリックではなく東方正教会またはセルビア正教徒なので、異教の人に「神と共に」と言うのは何だか変な感じがするのだとか。

挨拶の言葉にすらこんなに気を使わないといけないなんて、多民族が住む場所というのは大変ですね。Zdravo か Bog か、一体どっちを使ったらいいんだ!と迷った場合には、Dobar dan (ドバル ダーン) が便利です。Good day (Good afternoon) という意味で、最も中立的な言い回しです。でも、場合によってはちょっと堅苦しい。もっとカジュアルに言いたいけれど、人の気分を害するようなことは言いたくない・・・。そんな場合に、クロアチアやボスニア・ヘルツェゴビナに住むクロアチア人の間で近年好まれているのが、イタリア語のチャオ。「やぁ。」にも「じゃあね。」にも使えます。

クリスマスなのにメリー・クリスマスと言えないアメリカ

宗教的な意味合いを持つ言葉に気を使うのは、バルカン半島だけではありません。やはり多民族国家のアメリカでも、テロ事件以降、民族の共存にとても敏感になっています。なんと、メリー・クリスマスという言葉さえ、公の場(市役所やお店など)の従業員や所員の間で禁止されている場合があります。Merry Christmas! のかわりに、Happy Holidays! と言う様にしつけられるのだそうです。下は、Boston Globeのニュース記事です。
De-Christmasing Christmas

この記事によれば、毎年カナダのノヴァ・スコシアからボストンに寄贈される巨大なクリスマス・ツリーが、昨年末のボストン市のホームページでは敢えて「ホリデー・ツリー」と称されて紹介されたということです。異教徒の市民に対する配慮なのだそうですが、大多数のアメリカ人にとっては紛れもなく「クリスマス・ツリー」なわけで、クリスマス・ツリーをクリスマス・ツリーと呼べないクリスマスなんておかしい、という声もたくさんあるそうです。アメリカの FOXテレビのニュースキャスター、ジョン・ギブソンさんが書いた「The War On Christmas」という本によれば、イリノイ州の政府機関では職務中にメリー・クリスマスと言うのが禁止され、また、ニュー・ジャージー州のある学校では、伝統的なクリスマス・キャロルの演奏が禁止になったそうです。詳しいことは、この本の書評の中で読めます。
The War On Christmas (Goofigure.com より)

私ももっと言葉の使い方に気をつけようと思いました・・・。

「クロアチア語、ボスニア語、セルビア語の間の深い溝 」に続く


参考:「クロアチア語を教えて!」ホームページ レッスン2、6日目「クロアチア語の挨拶」

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