March 10, 2006

日本から寄贈されたバス



先日、Exciteの世界びっくりニュースにこんな記事が出ていました。
オランダからのバス寄付にセルビア急進党員が憤慨 (追記:リンク切れ)

元の記事はロイター。(英語)
Send Dutch bus back, say Serb nationalists

セルビアの極右政党メンバーが、オランダから寄贈されたバスを返還するよう地方政府に要求している。

バスはオランダからセルビア南東部の街ピロトに寄贈されたが、セルビア急進党のメンバーが、これは侮辱だと述べている。現在、セルビア急進党のボイスラフ・シェシェリ党首がオランダの国際戦犯法廷で拘束されているからだ。

「こんなゴミをよこそうと思いつくこと自体が間違っている」と、 セルビア急進党地方支部リーダーのボバン・ボジノビッチは言う。「セルビア急進党は我らの最も勇敢で偉大な党首を拘束している人々からのほどこしは受けたくない」

しかしミラン・ポポビッチ市長は、ピロトにはバスが必要であり、寄贈品を返すことはできないと述べた。複数の西欧諸国が90年代のバルカン戦争の傷手から立ち直ろうとしているセルビアの街にバスを寄贈している。(以下略)

国際法廷で起こっていることはオランダのハーグの一般市民には何の責任もないわけで、そこに怒りを向けるのはやっぱり変な話というか、まさに「びっくりニュース」です。そんなことよりも、私にとって興味深かったのはミラン・ポポビッチ市長の下の発言です。

ポポビッチ市長は、「国民が外国で裁きを受けることがあってはならないし、現在スヘーフェニンゲンの法廷拘置所で起こっていることに反対する」と同意を示したうえで、「だからといって助けを受けたり協力したりしてはいけないというわけではない」と述べた。

「国民が外国で裁きを受けることがあってはならない」とか、「国際戦犯法廷はあてにならないから信用出来ない」という意見は、クロアチアのアンテ・ゴトヴィナ(アンテ・ゴトビナ)元将軍がハーグの国際戦犯法廷に拘束されたときも、クロアチアでよく聞かれました。また、先日急死した戦犯のミラン・バビッチ氏も、このスヘーフェニンゲンの法廷拘置所で死体で見つかっており、自殺と報道されていますが、ヴェチェルニ・リスト紙を含む一部のメディアでは他殺の可能性も指摘されています。(それについてはまた別の機会に書きますね。)私は、セルビア側の意見は今までよく知らなかったので、このポポビッチ市長の発言を目にしたとき、セルビアの人も国際法廷に関してはクロアチア人と同じように感じているんだなぁ、と思いました。

日本から寄贈されたモスタルのバス

さて、この記事でもうひとつ思い出したのが、日本から寄贈されたモスタルのバスです。そうです、ボスニア・ヘルツェゴビナのモスタルで、2001年に日本からプレゼントされた40台の黄色いバスが元気に走っているんです!(実際にバスが渡されたのは2002年。)その乗り心地を現地の友人(クロアチア人)に聞いてみました。

まず、返ってきたのは、「日本のバスは小さい!」「エアコンがないから夏は猛烈に暑い!」ということでした・・・。日本人は体が小さいから日本のバスは小さいんだろう、と思っていたそうです。でも、よく調べてみたら、小さいのにはちゃんとしたわけがありました。これは日本から来たバスではなく、ドイツ製の新しいバスだったんです。モスタル周辺の細い山道でも運行できるように、日本政府がわざわざ小さいバスを選んだのだそうです。また、老人や体の不自由な人々のために、敢えて床の低い車体が選ばれました。日本政府は単に7億6千9百万円というお金をポンと渡しただけではなく、いろいろ考えてバスを選択し、メンテナンスの道具や替えのパーツまで調達していたんですね。こういうことを昨日初めて知った友人は、日本政府の思慮深さにとても感心していました!とくに、戦争で負傷して体が不自由になった市民もたくさんいるので、そういう理由で低い車体が選ばれたことに感銘を受けていました。

日本から贈られたモスタルのバスに関する詳細は、下のサイトで見られます。バスの写真もあります。
Restoring Mostar City transportation by procuring new buses (追記:リンク切れ)

バスはドイツの MAN製で、車体の形はだいたいこの Lion’s Classic というタイプに近いそうです。(モスタルのバスは黄色ですが。)下のサイトに行き、左のメニューで Passenger cabin というのをクリックすると、客席の写真などが見られます。色違いですが、だいたいこんな感じだそうです。
Lion’s Classic (追記:リンク切れ)

モスタルに通勤している友人は、この日本のバスによく乗ります。時間帯やルートによっては、日本のバス以外も走っています。日本のより車体が大きくてゆったりできるものの、30年ぐらい昔のおんボロのバスなので、もう表示も何も全部消えてしまっているような車体だそうです。それにしても、なぜ日本はエアコンのついたバスを選んであげなかったんでしょうかね?!夏は車内が40度C近くになってしまいます。通勤で片道一時間もそのバスに乗っていたら、ヘトヘトだそうです。それとも、たまたまそのバスだけエアコンが壊れてしまったのでしょうか??でも冬は車内に暖房がよく効いて快適だと言っていました。

日本のバスの写真。モスタル市街。




側面(窓の下)にこう書かれています。

COOPERATION
JAPAN
FOR
BOSNIA
AND
HERZEGOVINA
2002

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