October 5, 2005

ボスニア紛争の終結から10年たっても (2)



昨日の新聞記事に出てきたレイラさんは、1995年7月のスレブレニツァ大虐殺(Srebrenica massacre, Siege of Srebrenica)でお父さんとおじいさんを失いました。このとき、村の7000 - 8000人の男性(少年からおじいさんまで)がセルビア人に連れ去られて殺されたと言われています。 

レイラさんのおじいさんは女装して家族と共に逃げている途中でセルビア人に捕まり、二度と帰らぬ人となりました。戦場となったほかの村々でも男性市民が虐殺のターゲットにされることがよくあったそうです。(男性=戦力なので。)男女問わず皆殺しになる場合も珍しくありませんでしたが、その他の例ではまず村の男性だけが殺されたあと残った女性たちが性的な虐待を受けたり奴隷同然に扱われたりしました。

戦争未亡人のなかには妊娠中に夫を亡くした人もたくさんいますし、敵兵から性的暴行を受け妊娠した人もいます。ボスニア戦争中のレイプ被害はこれまでも多く報告されてきましたが、その子供たちが10-13歳になる今現在どんな問題を抱えているのでしょうか。それについて読める記事があります。
Bosnian children born of war rape asking questions(MSNBC)

この記事によれば、約2万人のボシュニャク人(ムスリム)女性が戦争中に性的暴行の被害者となり(クロアチア人やセルビア人女性も同様の被害にあっています。)出産直後に赤ちゃんを殺す例が多いものの、暴行されたことを隠して育てる例、産んでその子供とのかかわりを絶つ例があります。お父さん(暴行をしたセルビア人兵士)に育てられている子もいるし、孤児院にいる子、養子にもらわれた子など状況はさまざま。このような場合、子供の心を傷つけないようにするには出来るだけ出生の秘密を隠したほうがいいとされています。それでもいつ誰に見破られるかわかりません。自分の出生の秘密を知り、自殺をしようとする子供もいるそうです。

養子といえば先日、アメリカの歌手フェイス・ヒルが自分の生い立ちについて語っているインタビューを読みました。彼女自身も赤ちゃんのときに養子としてもらわれたそうです。最近ではアンジェリーナ・ジョリーが2児を養子にして話題になっていますね。養子縁組はアメリカでは頻繁に行われていて、養子にしても隠さない親がたくさんいます(特別な理由がない限り)。人種の違う子供を養子にする場合も多いので、隠しようがないとも言えますが・・・。普通は、出来れば生い立ちの事実を受け入れて生きたほうが子供にとっても親にとっても精神上よいとされているようです。しかし、たとえそうしたくてもそれができず、ずっとひた隠しにして生きなければならない人々(ボスニアの人も含め)のことを思うと、何とも心が痛みます。

スレブレニツァ虐殺に関する記事:

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