12月1日付けの地元の新聞にこんな記事が出て、話題になっています。
ブルース・リー像を壊した犯人はまだ捕まっていませんが、有力な目撃証言と証拠(足跡など)が出てきました。犯人と思われるのは、なんとジプシー(ロムまたはロマ)の子供たち。ジプシーの子供たちが集団でヌンチャクを取ろうとしている姿が地元の人々によって目撃されています。あまりにもキンピカなので、ヌンチャクを金の延べ棒のように高価なものだと勘違いしていたそうです。(本当は銅ですよ!)注意した人もいたそうですが、全然いうことを聞かずに、しぶとくねばっていたそうです。その時点で警察に通報すればよかったのに!まさか子供の力で壊せるとは思わなかったのかな。
昨日の日記に載せた写真を見てもわかるように、真っ白だった土台が、泥の足跡や手跡で汚れています。(除幕式当日は雨でした。)ブルース・リーの銅像にももちろん指紋がたくさん残されています。しかし、盗んだ現物(片方のヌンチャク)をうまく隠して否認すれば、警察に捕まらないかもしれません。「取ろうとしたけど失敗した。結局何も取っていない。」、といえばいいんですから。
ジプシーの存在というのは、バルカン半島だけでなく、ヨーロッパ全体で非常に大きな問題になっています。つい先月も、こんな新聞記事が出ていました。
Gypsy Integration In Europe Urged
ジプシーに対する差別や暴動が、フランスをはじめヨーロッパ各地で起こっているんですね。モスタル周辺のジプシーも評判が悪いです。そして今回の犯人がもしもジプシーの子供の仕業と判明した場合、さらに悪くなるでしょう・・・。また、犯人が別人だったとしても、ジプシーの子供たちが銅像を泥まみれにした事実には変わりがないので、やっぱりこれで評判を落としたことになります。
ジプシーはなぜ評判が悪いのか?
一部のジプシーによる非社会的な行動が、ジプシー全体の評判を落としてしまっています。例えば、物乞いと盗みで生活を立てるジプシーのグループの存在。親が子供に物乞いをさせたり、万引きをさせたりします。(子供が盗んだものを親が受け取る。)ジプシーというのは、物語などに盗賊として出てきたりするのが典型ですが、それを地でいくようなグループがまだいるようです。それが生活手段なので、罪悪感もほどんどないと思われます。まともなジプシーは、自分たちの手で作った手芸品や工芸品を売ったり、日雇い(または季節)労働をしたり、ちゃんと自分で稼ぎます。ヘルツェゴビナに住む友人のお母さんが、町でジプシーの子供に物乞いをされたときのこと。「何も食べていないので、お金をちょうだい。」とせがむので、「食べ物ならあげられるけど?」と言ったところ、「食べ物はいらないよ。お金だけちょうだい。」という答えが返って来たそうです。「お金をもらってどうするの?」と聞いてみたら、「お金をためて家を買うの!」という返事が。ジプシーは移動する民族なので、なぜその子が「家を買う」と言うのかよくわかりませんが、それにしてもそんなことを言われたんじゃ、「こっちだって戦争で何もかも失って一生懸命働いて家を買おうとしているのに、子供に物乞いをさせて稼いでいるようなジプシーにお金をやる余裕なんかないのよ!!」と思ってしまってもしかたがない。
一方、本当に貧しくて物乞いをしているジプシーの子供もいると思うのですが、「ああ、どうせまたウソ付いて物乞いをしてる」と感じる人が多いので、本当に貧しい子供たちがお金を恵んでもらえるチャンスも減ります。また、お店の経営者たちは、ジプシーの子供たちによる万引きに困っていますから、たとえ盗みをしたことのないジプシーでも、疑いの目で見られてしまいます。
そして今回の事件により、一部のジプシーの子供たちのしつけの悪さがまた明るみに出てしまいました。でも、未成年のことなので、ジプシーに対する非難の声というよりは、「警察や公園がもっと警備に気を配るべきだった」、という非難のほうが地元ではいまのところ大きくなっているようです。
もしも日本にも流浪の民が現れたとして、日本の銅像にそんなことをされたら、白い目どころじゃ済まされないでしょうね・・・。それこそ民族問題に発展しそう。
銅像に残された足跡。(撮影日:12月2日(現地時間))
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