「ボスニアにブルース・リーの像 民族を越えた平和のシンボルに」(追記:リンク切れ)
かつて激しい民族紛争の舞台となったボスニアの都市モスタル。このたび、新しい平和の象徴として、ここにブルース・リーの像が建てられることになった。リーはムスリム、セルビア、クロアチアいずれの民族においても崇拝されている。
ブルース・リーの没後30周年にあたる2003年に、熱狂的ファンのグループが自分たちのヒーローを讃えようと思い立ち、プロジェクトが始動した。彼らは寄付を厚め、一年後に市の承認を得た。(以下省略)
出処はイギリスのロイター通信で、そこでもやっぱり珍事件としてOddly Enough のカテゴリーに入れられています。
(上の記事の掲載期間が過ぎた場合、「こちら」で同じ記事が読めます。)
かくいう私も最初は「何で今時モスタルにブルース・リーなんだろう?」と思ってしまいました。そこで、クロアチア人の友人の協力により、地元モスタルの人(一般市民)に意見を聞いたところ、実に納得のいくお話が得られましたのでここにご紹介します。
ブルース・リーの銅像が建てられるのは、彼がボスニア・ヘルツェゴビナで単に「崇拝されている」からではない。もっと大事なのは、彼には国籍不詳なイメージがあり、ムスリム寄りでもクロアチア寄りでもない全く中立的なヒーロー像になりえるからだ。だから、極端な話、日本人の像でもよかったかもしれない。でも、クロアチア人・ムスリム両方から好かれていて、ブルース・リーよりも有名な日本人なんていないじゃないか。
普通、銅像になるのはその国や民族のヒーローだ。しかし、モスタルには複数の民族が住んでいる。ひとつの民族には英雄である人物も、別の民族からみると悪魔かもしれない。実際、この前の戦争のとき、各地の銅像が反対勢力によって破壊されてしまった。民族間の争いのもとになるような銅像にはもううんざりなんだ。
ブルース・リーの像を建てるという計画には賛成も反対もしない。ただ、政治家に悪用されないことを祈るのみだ。
なるほど!こう聞くと、ぜんぜん珍事件ではなくなりますね。むしろ、とても理にかなった選択ではありませんか。ブルース・リーはアメリカ生まれですが、それでも多くの人にとっては「え?あのブルース・リー?アメリカ人だっけ、それとも中国人?あ、香港とか?」という国籍不詳なイメージがあると思います。そして、クロアチアにもムスリムにも関係ない宗教の人。実際にブルース・リーが何の宗教の信者だったか知りませんが、絶対にキリスト教やイスラム教信者には見えない。これが非常に重要なポイントです。そして万が一、次に戦争が起こったとしても中立で破壊の対象にならないようなヒーロー像。だからブルース・リーが「民族を越えた平和のシンボルに」なりえるんですね。
→ モスタルに完成したブルース・リー像が意味するもの に続く
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